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秋の日の釣瓶落とし

 こんばんは、チェスです。

 調子に乗るんじゃねぇ~、と怒られると思いますが、いやしかし、また超短編小説風、書いてしまうのです。申し訳ないです。

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 日曜日、午後一杯の時間を使って、彼女は美容室にいるらしい。男性だって、美容室で髪をカットしてもらうご時世だと思うけど、ボクはまだそのような贅沢な時間の使い方をしたことがない。尤も、ボクの頭をカットしてもらうだけならば、「午後一杯」はかからないだろうけど。

「この時間には終わっているから、着いたら電話して。」

 狙い過たず、その時間に僅かに早く、ボクは愛車を人出賑やかな駅前の、空いていたスペースに止めた。電話をかけるとコール3回で彼女が出る。何故だか、小さな笑い声。
 ボクは停車していた位置を教えようと、周りを見渡して、右手に見える有名大手スーパーの名前を上げた。僅かな沈黙の後、

「ああ~、クルマが見えました!」

 ほんの近くにいたらしい。通話は僅かな時間で切れた。
 無事に彼女が隣に乗ってきた、それは約束の時間ぴったり。

 車内に、香りの微粒子も移ってきた。これはパーマ液の香り?リンスやトリートメント、若しくはシャンプーの香り?たぶん、それら全部が混在している美容室の香り。ともあれ、今日きれいになった彼女を、世界で最初にボクが独り占め。

 クルマを暫く南に走らせて、やがて西に方向を転じる。
 長い橋を渡りはじめると、1時の方向に、今まさに沈まんとしている夕日。

「東京で、こんなきれいな夕日・・」

 そう、遠く山並みに沈む夕日や、水平線に沈む夕日は絵になるけれども、たぶん町工場の低い屋根の間に沈んでいく夕日だって、その色は同じ様に鮮やか。そこに地平線なんてないのだけれども。
 橋を渡り終えると、クルマを再び南へ転じてしまったため、見た夕日は「秋の日の釣瓶落とし」の如く僅かな時間だったけど。

 翌日、彼女のメールは、きれいな夕日に触れていた。やがて同じ記憶の共有になるかな。

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 文字で読者にイマジネーションしてもらう作家という商売の方々は、本当にすごいと思いますね。
 素人は、所詮この程度です。

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コメント

「美容院」という響きが、少しレトロな感じがしていい響きです。またパーマ液・・・というものも現代的な単語を並べるだけではなく、独特に「匂い」が感じられます。今回は、少し時代を遡った、私達の若かりし頃(今でも若いですよね・・・気持ちは)の雰囲気がします(メールが電話だったら完全に)。それが、この題名「釣瓶落とし」となり、相乗効果となってすこしセビア色の映像のイメージを醸し出して、今回も良かったですよ。

投稿: AA | 2007.10.09 00:01

>AAさん
 いつも読んでいただき、恐縮です。
 頭の中で、「書きたいこと」が出来上がったとしても、それをどんな言葉を使って、どんな表現にするのかによって、読むときには全く異なった印象を受けますよね。プロの人たちは、その手段にたくさんの引き出しを持っていて、無数の組み合わせから選び出す作業をしているのでしょうね。

投稿: チェス | 2007.10.09 07:34

こんばんは。
約束の時間より早く車を滑り込ませる「ボク」と
3回コールで電話に出てすぐ近くで待っていてくれる
「彼女」・・・
お二人の早く会いたいという気持ちが現れていますね。
これからもっと沢山の同じ景色を見て、
同じ時間を過ごし、思い出を共有していくのでしょうね。
ほんの一瞬でも、美しい夕日はずっと心に刻まれるのでは・・・と思います(^_^)

投稿: たかちゃん | 2007.10.10 00:24

>たかちゃん、おはようございます。

拙いものに何時もコメントをいただき、ありがとうございます。
ある瞬間でなければ見ることができないものを、時間を共有していて見ていた心象風景を表現したかったのですが、如何でしたでしょうか。

投稿: チェス | 2007.10.10 07:30

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