ABL
こんばんは、チェスです。
エアバンドリスニング=略してABLというのをご存知ですか。空港の展望デッキなど見通しの良いところで、何やら怪しげな無線機の様なラジオを持ち、頭にはヘッドホンを付けている若者(別に若者でなくても良いが)がいたら、それは大抵ABLをやっている人です。
以前、「ぼくは航空管制官」という航空交通管制をシミュレートしたパソコンゲームをご紹介したことがありましたが、これをやりますと、盛んに航空無線交信が登場いたします。デリバリー、グランド、タワー、ディパーチャー、アプローチといった空港の各セクションと航空機との無線交信ですが、これらの無線交信のための周波数は空港毎に決まっていますから、そうした周波数を受信できるラジオを空港に持っていけば、航空無線を自分の耳で聞くことができるのです。
もっとも、航空無線交信は万国共通で英語と決まっていますし、その内容は極めて専門的でありますので、シロウトが聞いてもさっぱり訳がわからぬしろものであります。
一度イグニッションを回し、ハンドルを握れば、好き勝手な場所へ走らせることができる自動車とは違い、航空機の場合には全てが「航空交通管制」という仕組の下で運行されておりますから、「我が社のためになるべく早く飛んで行こう」と勝手な飛び方をすることは許されません。
何しろ、出発する前から許可が必要です。パイロットは、自分の機が出発する時間の5分前になると、「デリバリー」というセクションを呼び出します。
「東京デリバリー こちら3番スポットに駐機しているコバン師エア301便です。」
「コバン師エア301便 目的地新千歳までのフライトプランを許可します。出発方式は羽田反転方式で、SIDはこれこれ、○○、△△を経由して、その間の高度はこれこれ、あなたの機のスクォークは○○・・。」
出発前に予め提出されているフライトプランに基づいて、デリバリーがだいたいこんな感じで許可を出しているのです。この、ちょっと長い無線交信をパイロットは聞いていて、聞き終わると、そっくりそのままオウム返しに復唱しなくてはいけません。
飛行機にお客さんが乗り終わると、ドアが閉まってボーディングブリッジが左舷から離れ、タグにプッシュバックして貰いますが、これにも許可が必要です。今度はグランドコントロールというところを呼び出します。
「グランド こちらコバン師エア301便です。プッシュバックの許可を願います。」
「コバン師エア301便 ランウェイ34Lへのプッシュバックを許可します。」離陸に使う滑走路によって、プッシュバックする向きが違いますから、使用滑走路込みでプッシュバックの許可を出します。
プッシュバックしてもらったら、今度は滑走路の端まで移動しなくてはなりませんが、これも許可が要ります。
「グランド こちらコバン師エア301便です。タクシングの許可を願います。」
「コバン師エア301便 内側の誘導路で、ウイスキー5、デルタ3を経由してランウェイ34Lまでのタクシングを許可します。」
こいつもオウム返しの復唱です。
忙しい空港ではなかなか離陸の順番が来ませんが、やっと自分の順番になり、今度は離陸の許可を管制塔に貰います。
「タワー こちらコバン師エア301便 離陸の許可を願います。」
「コバン師エア301便 ランウェイ34Lからの離陸を許可します。現在風は6ノットで○○です。」
こいつもオウム返しの復唱をして、やっと離陸です。
こんな調子で無線交信をしているのを、じっと聞き入って悦に入っているのがABLをやっている人です。
しかし、自動車の運転で一々こんなことをやっていたら、大変なことになりますね。
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