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律速段階

 こんばんは、チェスです。

 会社から帰宅途中、小職の前を、野球部員と思しき高校生が、そうですな、6、7人で固まって歩いていました。人生の中で、最も生命力、活力に溢れている時期で、しかも運動系クラブの部員ですから、ダラダラもたもたと歩いている訳ではありません。繁華街あたりで見かける、おしゃべりが全く途切れない女の子同士の歩き方とも、無論違います。ごく普通に、まずまずテンポ良く歩いているのです。

 しかし、かなり後から歩いていた小職は、やがて彼らに追い付いてしまい、適当な頃合を見計らって追い抜かなければいけませんでした。
 小職は会社帰りで、決して元気良くズンズンと歩いていた訳ではないのに、です。

 まぁ、これは、ちょっと考えると理由はわかります。
 人間、何人かで歩く時には、最も足の遅い人に、全体の速度が支配されてしまいます。

 男女カップルが歩いているのを見て下さい。相当の速度で歩いているカップルがいたとすれば、きっとケンカでもしているのでしょうね。大抵は、女の子の足に男が合わせている筈です。

 4、5人のグループになると、全体を同じ速度に合わせるのは一層困難となり、自然、平均速度は遅くなってしまいます。
 もっと極端な例では、朝の混雑しているラッシュ時の駅のプラットフォーム、学校や職場へ向かう人達は、皆時間に追われており、急いでいるはずですが、そうそう早くは歩けません。まぁ、この場合は人間が多すぎて、物理的に早く歩くためのスペースが無い、ということもありますが、ラッシュ時の駅利用客というのは、ほとんどその駅の構造を知りぬいており、自分の行動も毎日のことで、慣れているはずですから、もうちょっとスムーズにいきそうなものです。
 ですけれども、全体の流れは少数の遅い速度の人に支配されてしまうのです。

 この様に、複数のメンバーが同時に歩行しようとするときは、その数が多くなればそれだけ、速度を上げる(若しくは一定にする)のは困難になり、メンバーの中で、遅い人の速度に合わさざるを得なくなります。
 あくまでも概ねの話でしょうが、同時歩行の人数と、平均速度は、反比例する、と言っていいかもしれません。

 日露戦争当時、ロシアのバルチック艦隊がヨーロッパから遠く日本へ向けて遠征中、ロシアの本国では、更に増援の艦隊を送るので、バルチック艦隊を途中で待たせる命令を出しました。
 ところが、バルチック艦隊の司令長官・ロジェストウェンスキー提督は、「冗談じゃない」と怒ったそうです。

 普通なら、増援艦隊が来るのだから、戦力が増えてありがたい筈ですよね。

 でも、ロシア本国が送った増援艦隊は、あまり速度の出ない、旧式の戦艦だったのです。
 いざ、日本の連合艦隊と海戦になったときは、バルチック艦隊は、まとまった運動をするためには一緒の速度で戦わないといけませんが、旧式戦艦が混じれば、これに速度を合わせないといけなくなってしまうからです。仮に敵の艦隊が20ノットで運動しているのに、こちらは15ノットしか出せないとしたら、海戦の不利は素人でもわかります。

 それやこれやで、結局バルチック艦隊は、日本海海戦で負けてしまうのですが・・

 このように、あるグループがまとまって行動しようとするときに、1人だけが遅いと、全体の速度は遅い人に支配されてしまいます。いきなり化学の話に飛んでしまいますが、化学反応においても、マクロ的にみれば単純な反応であっても、ミクロ的には何段階もの経過を辿って反応が進んでいます。で、その段階中で、最も手間のかかる部分が、その反応全体の反応速度を支配しています。速度を律するので、そこのところを「律速段階」と呼んでいます。

 「もっとも遅いものが、全体の速度を支配する」色々な現象に表れていそうですね。

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